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さようなら電源コード! USBの新しい電源供給規格
2013 2013-11-18

私たちの日常生活の中において、USBは最も幅広く利用されている転送規格の一つでしょう。USBインターフェースは便利で使用方法が簡単、また体積も小さく、コストも合理的であるため、今では日常生活のあらゆる場所でUSBを見ることができます。家庭内で使用するテレビ、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットなどの製品から、オフィスで利用される仕事用のコンピューターやプリンター、そして車に搭載されているカーオーディオ等の車載エンターテイメント機器のデータ伝送もUSBを使用しています。

便利で快適、信頼性が高く、なおかつ高速でデータをやりとりできる点以外にも、USBにはインターフェースの接続を通して電力の伝送が可能となる非常に便利な機能あります。しかしながら、現在のUSB給電は最大で7.5Wの電力供給能力しかありません。下記参考図(図1)のとおり、現在のUSB規格の電力供給能力は、USB2.0規格は2.5W 5V, 500mA)USB3.0規格は4.5W5V, 900mA)、そしてUSB Battery Charging 1.27.5W5V, 1500mA)の電力が利用可能です。このような電力供給規格の進歩はスマートフォンやモバイルオーディオ等を代表する携帯端末に充電するための能力としては問題ないレベルですが、PC用のモニターやノートパソコンなど、大型で大きな電力を要する製品に対しては不十分です。

*図1 USB電力給電(USB-IF ウェブサイト ”USB Power Delivery Specification 1.0”より抜粋)

100Wの電気供給が可能となるUSB規格 より創造的な接続形態が可能に

昨今、USB-IFはUSB Power Deliveryと呼ばれる新しいUSB電力供給規格を発表しました。これは、別の機器同士でもUSBを通じた電源供給に対応できるために、そして電源コードによらない給電のために新しく開発された規格です。この規格の主な特徴は、100Wの電力供給により、一本のUSBケーブルで各機器が十分な電力を確保できるようになること、そして充電時間を短縮させることが可能となる点です。また、モバイル環境の使い勝手を更に良くすることができます。その基本な技術概要(図2参照)は、チップセットの中に電力を一時的に保存し、電力を必要とする装置に伝送する仕組みになっています。このように、USB Power Deliveryによって機器同士のデータを伝送するのと同時に給電ができる機能を搭載することとなり、時間の短縮と利便性の向上に繋がります。

*図2 USB Power Delivery基本技術概要

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*図使用実況シミュレーション


 

3の使用実況シミュレーションを例に説明します。従来の使用状況ではホスト機器(Power Source)が電力の給電側であり、接続されたディスプレイ、ハードディスク等(USB PD Device)に電力を提供することができます。一方、携帯やハードディスクは供給される側であり、メインマシンから電力供給を受けます。ディスプレイやノートパソコンはUSB Power Deliveryに対応しますが、上記の様な技術概要より、これらの機器は給電側でありながら、供給される側になることもできます。よって、ノートパソコンの電力が不足の場合やポータブル電源を持ってない時でも、モニターを通じて給電することができます。また、モニターが電力を必要とする時はメインマシンやノートパソコンで給電することができ、両者は携帯、ハードディスク等のその他装置が電力を必要とする時にUSBのインターフェースを利用して電力を伝送することができます。この他、電力供給と同時にデータ転送も行えます。このような機能の応用により、USB Power Deliveryの仕様は各メーカーが期待する新しい技術となりました。

 

 

既存技術と互換性を保った技術規格

20127月にUSB-IFUSB Power Delivery技術規格を正式に発表しました。現在のバージョンは1.0で、USB2.0USB3.0の二種類の仕様に対応することができます。これらの仕様書はUSB-IFウェブサイトからダウンロードすることができます。この技術が既存のUSB製品と問題なく使用できるよう、USB Power Deliveryは特に互換性面において、下記のような点で設計上の注意を払っています。

  • 既存のUSB機器でも問題なく操作することができる。
  • 既存のUSB2.0USB3.0ケーブル及びコネクターと互換性を保っている。
  • 基準に反したケーブル(Yケーブルなど)での使用は禁止。
  • 給電側、及び受け側は低コストによる設計を可能とし、電源管理メカニズムにより機器同士の給電量を調整することで効率のよい給電の実現を図る。
  • USB機器同士は既存のVbus pinを通じて通信し、その他複雑な設定を必要としない。
  • 給電側(Source) 及び受け側(Sink)は役割を交換することができる。二つの機能を持つ電源供給であり、高度な柔軟性を持つ。
  • 現在のUSB Battery Charging 1.2と共存可能である。

上記からも理解できるように、USB Power Deliveryは強力な電源供給の見通しがあると同時に、実際の利用時においても注意を払っており、各メーカーが簡単で、低いコストでPower Delivery機能を導入可能にするよう試みています。そして、ユーザーには短時間でPower Delivery機能を導入できるよう、利便性を追求しています。

 

期待される市場普及

市場においてはインテルがUSB Power Deliveryの主要な技術推進者となりますが、チップセット開発にはインテル以外に、テキサス・インスツルメンツ(TI)、スタンダードマイクロシステムズ(SMSC)が参加する予定です。電源チップセットはオン・セミコンダクター(ON Semiconductor)、およびNXPセミコンダクターズ等の大手メーカーが投入する予定です。20131月に米国ラスベガスで行われた展示会:CESConsumer Electronics Show)にて、USB-IFも会場でこの技術を展示しました。展示ではPower Delivery機能を持ったディスプレイを電源につなげ、USBケーブルを通じて65Wのノートパソコンに電源を供給し、同時にもう一台のディスプレイを接続することを披露しました。この様な簡単な展示からも、この技術の応用にを広く期待できるでしょう。

*図4 USB Power Deliveryマーク(左がUSB 2.0,右はUSB 3.0

USB-IFより認定された試験機関として、アリオンは常にテクノロジーの進歩とともに技術力を高め、より高度な検証を提供できるよう努めています。USB Power Delivery規格が発表された初期段階より、これらの技術を研究することで把握しており、また、遅れて発表された規格―SuperSpeed Inter ChipSSIC)の規格やバージョン別の把握も行っております。USBインターフェース関連の検証や試験などに関しまして興味がありましたら、是非当社営業部 (service@allion.co.jp)までお気軽にお問い合わせ下さい。お客様の疑問にお応え致します。高速伝送インターフェースの競争が激化する中、ThunderboltUSBより快速な伝送速度を持っていますが、USBは速度よりも機能面での快適さを追求することで将来における便利で使い勝手のいい環境を作ろうとしています。この他、USBインターフェースはコスト面において優位であり、市場の消費者にとっても受け入れやすいインターフェースです。市場においては短期間で主導権を握り、継続的に市場シェアを占めることとなるでしょう。USB Power Deliveryのマーク(図4参照)も徐々に浸透していくものと思われます。

 

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